看護師の勤務体制には2交代制勤務と3交代制勤務の2種類があります。看護師として働く時に、どちらの勤務体制を選ぶかどうかは大変重要です。
私は、新人看護師の時に3交代制勤務の職場に就職しました。その後、2交代制勤務の職場に転職し、その後は好んで2交代制勤務の職場で働いていました。しかし、初めて3交代制の勤務から2交代制の勤務に転職するときは「私にできるかな」という不安でいっぱいでした。
2交代勤務・3交代勤務、どちらの勤務形態にもメリット・デメリットはあります。
今回は、以前の私のように「転職で3交代制勤務から2交代制勤務に変えようか迷っている方」に向けて、私から見た看護師の2交代勤務、3交代勤務の比較を書いてみました。
Contents
看護師の3交代勤務とは?
まずは、3交代制勤務について簡単に説明します。
看護師の勤務で3交代勤務といえば、1日24時間を日勤、準夜勤、夜勤と3つの時間帯に区切って勤務することを言います。病院によって、時間が「何時から何時まで」で区切られているかは異なりますが、だいたいの時間でいうと、日勤は朝の8時〜17時くらい、準夜勤は16時〜翌日1時くらい、夜勤は0時〜9時くらいになります。
3つの各勤務帯が、どのように繰り返されるかの一例を以下の表にしてみました。
このサイクルは、病院によって違います。私が3交代勤務をしていた病院の場合「3日間の日勤勤務後、深夜勤、準夜勤、休み」というサイクルが一般的でした(日勤の日数は、1〜3日の間で変動はあります)。
3交代夜勤で働くメリットとデメリット
では実際に、周囲から聞いたり私が感じたりしていた「3交代で夜勤をするメリット・デメリット」を挙げていきます。
3交代勤務夜勤のメリット
1,病院に長時間拘束されない
2,心身への負担が2交代夜勤に比べると軽い
3,勤務間隔が狭いことが多いので、患者様のことが良く分かる
3交代勤務の夜勤では、1回の勤務時間は約8〜9時間です。小さな子供がいる、ペットが居るなどの理由で病院に長時間拘束されることが負担になる人や、スタッフの数も少なく心身への負担が大きい夜勤の時間が長くなることを好まない人は、3交代制の夜勤を希望する傾向にあります。
また、私が3交代で勤務していた時に思っていたことは「日勤で看護をしている患者様のことだから、状況をだいたい理解しているため、情報収集が楽」ということでした。
3交代勤務夜勤のデメリット
1,勤務の間隔が短くなってしまう場合がある
2,「休み→深夜勤務」の場合には、休みが休みと思えない
3,まとまった休みが取りにくい
1に示した「勤務の間隔が短くなってしまう場合」の具体例をみていきましょう。私が勤務していた3交代勤務の場合でいうと、上述した表の「水:日勤→木:深夜勤務」のことを指します。
この場合「日勤が終わって自宅に帰り、翌日0時には出勤しなくてはいけない」という状況になってしまうのです。
勤務と勤務の間隔は6時間で、その間に帰宅、ご飯、入浴などをすませると「2時間寝られるかどうか」という状況で出勤することになります。
それ以外にも、準夜勤務→日勤(深夜0時過ぎに仕事を終えて、同日の朝、日勤で出勤)、休み→深夜勤務(休日の日の24時には、深夜勤務が始まる)という勤務をしている友人もいました。
このようなシフトの場合には「勤務間隔が短すぎて休んだ気がしない」「休日にもかかわらず24時間丸ごと休めないため、疲れがとれない」という問題が起こります。
また、3交代勤務では、1日(24時間)に働く人員が2交代勤務よりも多く必要です。そのため、個々の出勤回数も2交代勤務より多くなります。すると、まとまったお休みをとることは2交代勤務よりも難しいのが現実です。
看護師の2交代勤務とは?
では、次に2交代制勤務について説明します。
看護師の2交代勤務の場合は、3交代勤務の準夜勤と深夜勤をくっつけて夜勤としています。そのため、基本的には「日勤」と「夜勤」の2つの勤務体制となります。どのような時間帯で働くかは病院によって異なりますが、日勤が8時~17時、夜勤帯が16時~翌朝の9時頃迄のことが多いです。
2つの勤務がどのように繰り返されるかは、特に決まっていません。1つだけあるとすれば、夜勤明けの日の翌日はお休みです。
上の例で言うと、月曜の夕方から勤務が始まり、一晩働いて火曜日の朝に終業します。そして、水曜日はお休みです。そのため、体力次第では火曜と水曜を2連休のように使って活動できます。
2交代夜勤で働くメリットとデメリット
では、2交代勤務の夜勤のメリット・デメリットはどんなことがあるのでしょうか?
2交代勤務夜勤のメリット
1,まとまった休みを取りやすい
2,時間を有効に使える
3,緊急事態がなければ、たまった仕事を一気に片付けられる
2交代勤務の夜勤をした後は”夜勤明けの日”と”翌日の休み”で2連休のような状況になります。看護師の勤務をしていると、なかなかとりづらい連休も、この夜勤明けを利用すればとりやすくなります。
そして、2交代制夜勤だと3交代制夜勤よりも時間の有効活用ができます。
例えば、勤務先までの通勤時間が片道1時間かかるとします。この場合1回通勤すると、往復で2時間かかります。
そのため、3交代勤務の夜勤のときは、準夜勤務と深夜勤務の2回分の時間(往復4時間)がとらてしまいます。しかし、2交代勤務になるとそれが1回の通勤で済むため、浮いた2時間を別のことにあてられます。
「通勤時間」という面から見ても2交代勤務は、時間の有効活用ができるのです。
仕事の面では、2交代制勤務の夜勤の時の方が、3交代制勤務の夜勤の時よりもルーチン以外の仕事が片付きやすい傾向にあります。
基本的に夜勤は、処置や検査もないので時間的にはゆとりがあるのですが、その分看護師の人数が少ないので、1つ1つの業務に時間がかかります。そのため、3交代勤務の時間では、ルーチンの業務を終えると業務終了時間になっており、ルーチン以外の仕事ができない状況になりがちです。
しかし、2交代制勤務の夜勤では勤務時間が長いため、自分で仕事の進行を工夫したり、時間配分したりすることができます。そのため、溜まっているルーチン以外の仕事(例えば、サマリー記入、受け持ち評価、委員会の仕事など)に取り組む時間を作りやすいです。
2交代勤務夜勤のデメリット
1,一回の勤務における職場での拘束時間が長くなる
2,急変など夜間に何かあった時には、心身の負担が大きくなる
3,休憩がとれなかった時は、長時間休憩なく働くことになる
4,朝方の集中力や判断力が落ちやすい
2交代制の夜勤は、17時間近く職場に拘束されることになります。看護師の人数は部署にもよりますが、1〜3人であることが多いです。そのため夜勤中に、患者様の急変などがあった場合は、一人一人にかかる負担が大きく、休憩も取れないということも少なくありません。
そして、夜勤終了時間が近づく午前6〜7時は「医療ミスがもっとも起きやすい時間帯」です(一般社団法人日本医療安全調査機構 H27医療事故報告等に関する報告書 より)。2交代制のこの時間帯の夜勤の疲労状況は、3交代制夜勤よりも強く、さらにハイリスクだと言えます。
2交代制勤務の夜勤をする時に知っておきたい「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」あなたは知っていますか?
ここまで看護師の勤務体制について、2交代制勤務・3交代制勤務のメリット・デメリットを書いてきました。
看護師の夜勤を含む過酷な労働環境については、以前から問題になっています。
そこで2013年2月に作られたのが「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」です。
これは日本看護協会が、看護師の労働環境を改善する目的で作ったガイドラインですが、法律ではないので、法的な効力はありません。しかし、できる限りこのガイドラインに沿って改善することを推奨されているため、このガイドラインが出来てから看護師の労働環境は徐々に改善されてきているようです。
夜勤をすることは、人間の体内リズムに逆らうことなので、少なからず体にも影響が出てきます。そのような夜勤をする自分の体を守るために、ガイドラインの内容を理解しておくことはきっとこれからの役に立つでしょう。
そんな「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」の内容を一部抜粋すると、下記のような内容となっています。
他にも、私が2交代制の夜勤をする際に思っていた疑問点についても調べてみました。
疑問1
法律の面でいうと、労働時間に対する休憩時間は以下ようになっています。
休憩時間について、実労働時間が6時間を超え8時間までは45分以上、 8時間を超える場合は1時間以上の休憩を勤務の途中で与える。
労働基準法(第34条)
看護師の2交代勤務の夜勤のような8時間を超える長時間勤務は「休憩時間を1時間以上確保すること」と定められています。休憩時間の上限が何時間であるかは各病院によって異なりますが、私の今までの経験からいうと、2交代夜勤の休憩時間は2時間程度のことが多いです。
疑問2
先ほどの「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」の中で、夜勤回数は「できるだけ少ないほうがよい」が基本の考えとされています。具体的には「3交代制勤務は月8回以内を基本 とし、それ以外の交代制勤務は労働時間などに 応じた回数とする」と書かれています。
看護師の2交代制夜勤の場合には「月に何回までOK」という明確な答えはありませんが、実際は、4回/月程度が標準になっています。
あなたが2交代制勤務に変えたい理由は?
はじめに述べたように、私は3交代制勤務よりも2交代制勤務で働く方が好きでした。なぜなら、2交代制勤務の職場に転職することで、3交代制勤務の時に不満に思っていた「プライベートな時間が足りない」という問題を解決できたからです。
私が転職した目的である”プライベートな時間の確保”については、3交代制勤務よりも2交代の勤務体制の方が優れていたので、私の希望する働き方に合っていたのです。
しかし、3交代制勤務から2交代制勤務へと転職を希望する人が全て「プライベートな時間」を優先するわけでありません。それぞれの解決したい問題があって、転職を希望されていると思います。
では、あなたの抱えている問題は「2交代制勤務」に転職することで解決できるのでしょうか?
よくある問題「体力・時間・お金」の3つの面から考えてみましょう。
看護師の2交代制勤務と3交代制勤務の体力、時間、収入を比較してみました
体力について
看護師の3交代制勤務での変則的なリズムに体の不調を感じて、2交代勤務への転職を考えているという方は少なくないでしょう。確かに、体のリズムは2交代制勤務の方が整えやすいです。なぜなら、2交代勤務の夜勤でも、休憩で仮眠を取ることができれば、体のリズム不整を起こしにくいといわれているからです。これをアンカースリーブ効果と言います。
アンカースリーブ効果とは?
人間の体には1日を作るリズムがあります。このリズムは、昼活動して夜寝ること、体温、血圧、ホルモンの分泌などで作られています。このリズムが乱れると、時差ぼけや、うつ病や不眠症を発症してしまうことが指摘されています。
夜勤などで、このリズムが崩れそうな時でも、仮眠をとることでリズムの乱れを予防することをアンカースリーブ効果と言います
3交代制勤務では、休憩時間は仮眠をとるほど十分な時間はないため、体のリズムが崩れやすくなります。
以上のことから、体の負担を考えて「3交代勤務から2交代勤務に転職したい」という方が、2交代制勤務への転職に踏み切ることは解決方法の1つと言えます。
時間について
私は、「自由になる時間」を求めて2交代勤務で働いていきました。結果、2交代制勤務の組み合わせを上手に利用することで、月の変わり目などには小旅行できる程度の連休が取れることができました。また、3交代勤務では準夜勤と深夜勤の2回出勤と退勤、出勤の準備などに使っていた時間を半分に減らせる効果があり、満足していました。
私のように、もっとプライベートな時間も充実させたいと思う人には2交代勤務はオススメです。
お金について
「収入を増やしたいから、2交代制勤務に変わりたい」と、思っている人もいるでしょう。
私の答えは、「収入を上げるために、夜勤手当が高いからという理由での転職は危険」です。その理由を私の過去の給料算定の表を見ながら説明します。
これからお見せするのは、私が面接を受けた病院からいただいた”給与の概算表”です。それぞれ、「3交代制」「2交代制」の給料概算表となっています。
はじめの写真(以下A病院とする)は、比較的大きな3交代制勤務の総合病院です。面接中に、それまでの経歴を換算して合計し、経歴に見合った基本給を割り出して最後に渡してくださいました。
基本給 245,200円
準夜勤手当 4,300円
深夜勤手当 4,800円
となっています。A病院の給与は、福岡の中では高い方なのですが、夜勤手当は、安めの設定です。
そして、次は個人病院(以下B病院とする)の面接でいただいた明細表です。夜勤手当が、「準夜と深夜」に分かれていますが、希望すれば2交代勤務体制をとらせてくれる融通の利く職場でした。私はこちらのB病院で、2交代で働きました。
基本給 194,500円
夜勤手当 15,000円
AとBの2つの病院の「夜勤の手当」だけを比較すると、2交代勤務の方がいいように思われます。しかし、収入全体を上げたいと思うのならば、夜勤手当だけではなく、基本給を見ることが必要です。なぜならば、基本給が、ボーナスなどの賞与に大きく影響するからです。
実際に、この2つを比較してみると、賞与が基本給の2ヶ月分だったとして単純計算で以下のようになります。
A病院:¥245,200×2,0ヶ月=¥490,400
B病院:¥194,500×2,0ヶ月=¥389,000
このように、賞与で10万円も違ってきます。
以上のことから、収入を上げる目的で勤務形態を変えようと思っているのならば、夜勤手当だけではなく、全体を見て判断するようにしましょう。
まとめ
「看護師として3交代制勤務で働いているけど2交代制勤務への転職を考えている」という方に向けて、それぞれの勤務体制のメリット・デメリットについて、私の経験を元にお話ししてきました。
2交代制勤務に変えたいと思う目的・理由を明確にした上で、あなたが満足して働ける環境を選ぶ参考になれば嬉しいです。
また、インターネットなどで情報収集をして好みの勤務体制を探すのもいいのですが、私の経験のように「本来は3交代制勤務をとっているが、2交代制勤務希望者には対応を検討する」という病院や施設もあります。自分で集められないような情報を集めるのには、看護師の転職エージェントに相談するのもおすすめです。