看護師が派遣やバイトをする時に、税金や保険がどうなっているのか把握していますか?
私は、つい最近まで税金や社会保険について全く分かっていませんでした。しかし、知ってみると「知らずに過ごすことは怖いことだな」と感じたり、「もしかすると年間に数万円の損をしていたかもしれない」と気がついたりしました。
今回は、同じような状況の看護師さんが知らずに損をすることのないように2回に分けて、税金と社会保険について大切なことを書いていこうと思います。
Contents
看護師が働く時に必要な税金
私達は、収入を得るとその収入に対しての税金の支払いが義務付けられています。
まずは、義務付けられている税金とは何なのか? また、未納の状態では何が起こるのか?について見てみましょう。
税金について
私達が収入を得ると、必ず発生する税金は2つあります。それは、所得税と住民税です。
所得税とは、1年間に発生した収入に対しての税金で、国に払う国税です。また、住民税とは住民票を置いている県や市に払う税金です。
これらは、私たちが快適に日常生活を送る為に、国や県・市が提供しているサービス(救急車・ゴミの回収・道路整備など)への対価として支払われ、憲法によって納付は国民の義務と決まっています。
これらの税金を滞納すると、延滞金が加算されて請求されたり、督促状が届いたり、それでも滞納が続くと財産の差し押さえがされたりなどの処分があります。
では、これらの税金の納付について説明します。
所得税の収め方(源泉徴収と確定申告)
所得税の払い方は2つあります。1つは源泉徴収、もう1つは確定申告です。
この2つの大きな違いは、「誰が税務署に申告納税をするか」という点です。源泉徴収は、私達に変わって雇用主が申告納税を行い、確定申告は私達個人が申告納税を行うことを言います。
では、源泉徴収と確定申告について、それぞれ見ていきましょう。
源泉徴収
所得税額は、毎年1月1日から12月31日までの総年収から、控除できる費用(扶養、保険料、医療費など)を引いた額に対して計算されます。
(図1)
ですが、私達が病院や企業で働いていると、所得税は年収が確定する前に、毎月の給与から引かれています。その仕組みが源泉徴収です。
源泉徴収は、「職場が現在の給与から年収を大まかに出し、その大まかな額を基準に毎月の所得税を計算して国に収めている」のです。病院や企業に勤める看護師さんは全員、雇用先の病院や企業が本人に変わり、源泉徴収によって税務署へ所得税の申告納税をしているのです。
なぜそのようなことをするかというと、もしも国民全員が個々に納税すると、税務署の膨大な作業負担になったり、納税時の多くのトラブルにつながったり、1年を通して安定した税収確保ができなくなったりするからです。
源泉徴収で支払っている予想額は、年末調整を行うことで正しい税金が確定されて、払いすぎや不足している分の税金の調整が行われます。
ですので、病院や企業に勤めている看護師さんは、源泉徴収と年末調整によって、所得税の申告納税は終了となっているのです。
確定申告
源泉徴収と年末調整で、所得税を収める以外に、所得税を納税する方法が確定申告です。
確定申告は、個人が図1の計算をして、年収が確定した翌年の2〜3月の確定申告期間に税務署へ申告納税する方法です。
看護師をしていて考えられる、「確定申告が必要な場合」は、このような場合です。
①1カ所からの給与収入がある➕副業で20万以上の収入がある
例:看護師で働きながら、個人で20万以上収入を得ている(メルカリ、ヤフオク、サロン経営etc)
②2カ所以上からの給与収入がある➕年末調整をしていない収入が20万以上ある
例:バイトや派遣、単発看護師などで、2カ所以上の場所でかけもちで働いており、1カ所は年末調整を行ったが、年末調整を行っていない20万以上の収入がある。
派遣やバイトをする看護師さんに多く当てはまるのは、②のパターンだと予想されます。
また、上の2パターンにあてはまらなくても、確定申告するとお得になるケースがあります。それは、以下のようなケースです。
・年末調整で行った控除以外にも、受けられる控除を申告する
例:1カ所からの給与しか貰っておらず、雇用先で年末調整を行ったが、他にも申請できる控除がある(その年に借りた住宅ローンがある、ふるさと納税をしている、家族も含めた医療費が10万以上ある場合etc 詳しい例は国税局HP参照)。
この場合、申告することで還付金が増える場合があります。
「看護師掛け持ち収入➕個人収入」の私の所得税納付方法
では実際に、看護師の正社員を辞めて、夜勤専従看護師や単発バイトをしながら、自分でも収入を得ている私の場合を見てみましょう。この場合、上の①②どちらにも当てはまり、以下のような申告納税になります。
・看護師夜勤専従での給与収入
⇨病院が行う源泉徴収と年末調整で、夜勤専従収入に対する所得税納付は終了。
・複数の単発バイトなどの給与収入(年間20万以上)
⇨給与支払いの時に、支払元が所得税を引いており、年末に源泉徴収表を発行してくれる。年末調整は行われていない収入なので、年末調整の代わりに自分で確定申告を行う。
・給与としてではなく、自分で得た収入(年間20万以上)
⇨申告していない収入になるので、自分で確定申告を行う。
このように、夜勤専従と複数の単発バイトで看護師として働き、それとは別に個人収入を得る私の場合、年末調整➕確定申告の両方が必要ということになります。
以上が、所得税の納税方法になります。
では次に、住民税について詳しく見ていきましょう。
住民税の収め方(特別徴収と普通徴収)
住民税の払い方も、2つあります。1つは特別徴収、もう1つは普通徴収です。
住民税の金額は所得税と違い、前年の1〜12月までの所得を元に市区町村で計算され、その年の6月から、前年の所得への住民税納付がスタートになります。
2つの住民税支払い方法の大きな違いも、所得税同様に「誰が市区町村に納税をするか」という点です。特別徴収は、私達に変わって雇用主が納税を行い、普通徴収は私達個人が納税を行うことを言います。
では、特別徴収と普通徴収について、それぞれ見ていきましょう。
特別徴収
住民税の特別徴収とは、以下のようなシステムです。
①1月の末に勤務先から市区町村に、前年の1〜12月までの給与支払報告書が提出されます。
②それを受けて、市区町村では住民税の納税額を算出し、5月までに通知書と納付書を「雇用先である病院や会社」に届けます。
③通知された住民税は、6月〜翌年5月までにわたって毎月の給与から天引きされます。
なので、毎月の給与明細で天引きされている住民税は、1〜5月の間は一昨年分、6〜12月の間は昨年分の住民税を納付していることとなります。
以上のように、看護師として病院や企業で働いており、特別徴収をされている時には、住民税納付は就業先に任せきりの状況となります。
近年では、市区町村としても「個人での納付で増える作業の手間を省く」「未納を防ぐ」などの目的から、住民税納付方法として特別徴収を推奨する傾向にあります。
普通徴収
住民税の納付方法としてもう1つの方法が、普通徴収です。
普通徴収とは、個人的に市区町村に住民税を支払う方法です。前年の収入を受けて、市区町村により算出された住民税は、6月には「その通知書と納付書」が個人宛に送られます(写真参照)。納付方法は、一括納付または4回の分割納付となっています。私達は、その納付書で銀行やコンビニなどでの支払を行うことになります。
住民税を普通徴収で払う可能性があるのは、以下のような場合です。
❶給与をもらっており、住民税が給与から天引きされていない
❷給与以外に、個人で収入を得ている(給与以外の収入に対する住民税を、給与から引かれている住民税とまとめて特別徴収にしたくない)
先に述べた所得税は、「給与以外の所得が20万以下ならば、その収入に対しての確定申告は必要ない」となっています。しかし、住民税は金額によらず全ての収入に対して申告が必要となっています。
では、普通徴収の為の申告はどのようにするのでしょうか?
❶の場合、給与を支払っている支払い元は「給与支払報告書を市区町村へ提出する」と決まっています。よって、勤務先から支払われる給与に関しての申告を個人でする必要はありません。
❷の場合は、収入に対して確定申告をしているかどうかによって申告方法は違います。
確定申告をしていない収入がある時は、市区町村役場で住民税のための所得申告を行います。
確定申告をしている収入の場合は、税務署に提出した確定申告書の必要事項が、税務署から市区町村役場に送られます。よって、住民税のために新たに申告する必要はありません。
下の写真は、確定申告書類の「住民税に関する事項」の欄です。赤枠内の「自分で納付」にチェックをすると「普通徴収」の手続きとなります。
しかし、全国の市区町村で住民税の支払い方法は「特別徴収を推進する」ようになっています。なので現在、住民税が天引きされている給与収入がある場合、その他の収入に対する住民税もまとめて給与天引きの特別徴収に含まれる場合が多くなっています。
住民税を引かれている給与収入がありながら、その他の収入に関しては「普通徴収」を望む場合は、該当の市区町村役場に問い合わせるのが確実でしょう。
「短期・単発のバイトで住民税が給与天引きされていない➕給与以外の収入がある」私の住民税納付方法
給与からの特別徴収がされていない私の場合、住民税は普通徴収となっています。
全ての収入に関しては「源泉徴収と年末調整」、「確定申告」によって税務署へ申告しているので、その通知が税務署から市区町村役場に報告されています。それによって、住民税が算出され、毎年6月ごろには住民税通知書が自宅に届き、個人で納付しています。
ちなみに、「看護師の正社員で働きながら時々バイトをしている」という看護師さんで、「正社員の就業先にばれたくない」という場合も、住民税がバレるバレないに大きく関わっています。
このことについて詳しく知りたい方には、こちらの記事がオススメです。
まとめ
ここまで、看護師が働く時に関係する税金のことについてお話ししました。税金については、複雑でわかり難いイメージがあると思いますが、どうしてもわからない場合は所得税については税務署、住民税については各都道府県役所に問い合わせると丁寧に教えてくださいます。
そして、税金と共に知っておくべき社会保険についてはこちらの記事がオススメです。